名古屋大学と長岡バイオ大学、横浜国立大学の共同研究グループは、細菌が持つ運動器官べん毛モーターを構成するたんぱく質の一つであるFliG分子の構造動態を解明した。
細菌のべん毛の根元にある回転モーターは”べん毛モーター”と呼ばれ、わずか45ナノメートルという小ささながら、F1マシンのエンジンの回転数に匹敵する超高速で回転可能である。さらに、トップスピードから瞬時に回転方向を変え、ほぼ100%に近いエネルギー変換効率を持つという極めて優れたモーターだ。
べん毛モーターの回転子を構成するたんぱく質のうち、FliGは固定子と相互作用することが知られており、モーターの回転運動において、主要な役割を担っていると考えられてきたが、これまで詳細な分子機構や相互作用様式の解明には至っていなかった。
今回、同グループは、FliGたんぱく質のC末端ドメイン(FliGc)のアミノ酸変異体を調製し、野生型FliGcと比較することで回転方向の変換制御機構の解明を目指した。その結果、FliGcは主に3つのコンフォメーションを形成し、複数の構造間を行き来するダイナミックな性質を有しており、それが前進や後退を決定するために重要な役割を担っていることが明らかになった。
今回見つかった特徴的なダイナミクスは高いエネルギー変換効率でモーターの回転方向を変換するために重要であることが予想され、この知見をもとに人工的にナノマシンを設計することで医療や人工生命設計など様々な分野への応用が期待される。