筑波大学と福島大学の共同研究グループは、フタホシコオロギの卵から成虫にいたる全発生過程について、走査型電子顕微鏡を用いて詳細に検討し、これまで証拠立てが不十分だった翅(はね)の起源をめぐる長い論争に決着をつけた。
昆虫は地球上で最も繁栄している動物群の一つであり、その繁栄の要因として、空中進出を可能にした「翅(はね)」と特殊化した「肢(あし)」の獲得が大きかったと考えられている。また、翅と肢を体に柔軟に結合させると同時に、強い筋肉の力に耐えうる「側板」の発達が重要であったため、昆虫類の進化・繁栄の理解には側板の起源を知ることが不可欠であり、この問題は長らく議論の的となってきた。
今回、同グループは、昆虫の発生過程を詳細に追跡し、翅と肢を受け止める胸部の側面を被う体壁である「側板」の由来を初めて明らかにした。さらに、背板と肢の境界(背板ー肢境界BTA)を確定することにも成功した。これらの成果により、翅の本体はBTAより背方の領域、すなわち「側背板」に由来する一方で、翅の関節や翅を動かす筋肉はBTAより腹方の領域、つまり肢(最基部節である亜基節、すなわち側板)に由来することが示された。これは、翅の「二元起源説」を強く支持するものである。
本成果により、側板、翅の起源が明らかになったことで、今後、昆虫類の進化を説明する説得力のあるシナリオを描けると期待される。