東京大学大学院の小西孝明氏(医学博士課程)らの研究グループは、国内の45歳未満の女性約80万人のデータを解析した結果、BMIが22kg/m2以上であると乳がんにかかるリスクが低いことを初めて示した。
乳がんは女性で最も多い悪性腫瘍であり、日本では9人に1人の女性がかかり増加傾向にある。女性ホルモンへの曝露など複数のリスクが知られているが、閉経後は脂肪細胞が主たる女性ホルモン産生の場であるため、人種・地域を問わず肥満が主なリスク因子である。しかし、乳がんにかかる年齢のピークは東アジア(40~50歳代)と欧米(70歳代)で異なり、閉経前では、肥満女性は欧米で乳がんのリスクが低く、東アジアでリスクが高い可能性が指摘されていたが、原因は不明だった。
研究グループは、2005年1月から2020年4月までに健診でBMIを測定した45歳未満の女性785,703人を解析対象とした。その結果、BMIが22kg/m2以上であると乳がんにかかるリスクが有意に低い(45歳未満ではBMIと乳がん発症が逆相関にある)ことが明らかになった。90%以上の日本人女性は45歳以降に閉経を迎えるとされ、この結果は、東アジアでBMIが閉経前乳がんに及ぼすリスクが欧米と同様であることを初めて示したものという。
今回の研究結果から、肥満者が少ない日本を含む東アジアでは閉経前の40歳代から乳がんになりやすいが、肥満がリスクとなる閉経後乳がんは比較的少ないものと推測される。このため、BMI分布を考慮すると、日本では40歳代を中心に若年からの乳がん検診の意義がより大きい可能性があるとしている。また、BMIと乳がんリスクの関連は人種を問わない可能性があり、乳がん発生のしくみの解明に寄与することが期待されるとしている。