東京農工大学と東京都立大学の研究チームが、プラスチック(ポリエステル)を原料の単量体に分解する新しい触媒反応を開発した。
ポリエステルは、繊維や食器、飲料用ボトル、家電製品や農業用資材など広範な用途で用いられ、世界的にも大量に消費されているプラスチックの一つである。その分解には、強塩基や添加剤、高温や多工程を要する方法が中心であるため、より効率的な分解方法が求められている。
本研究者らは、ポリエステルが、両端にカルボン酸が結合した単量体(ジカルボン酸)と両端がアルコールである単量体(ジオール)の反応により生成されるエステル構造が繰り返されたものであることに着目した。エステル構造を次々とメタノールなどの低分子量のアルコールに置き換えていくことができれば、最終的にポリエステルの原料であるカルボン酸のメチルエステルとジオールまで完全分解できることになる。
そこで、この分解反応を効率的に進行することができる触媒を探索することとし、様々な条件下で検討したところ、希土類元素のランタンの錯体が有効であることを見出した。ポリエステルの中でも多く利用されているポリブチレンスクシネートでは、メタノール中、触媒濃度わずか1mol%、反応温度90℃、反応時間4時間で定量的にポリエステルの原料であるスクシン酸ジメチルと1,4-ブタンジオールに分解できたという。
同様にしてポリアジピン酸エチレン、ポリブチレンテレフタレート、ペットボトルの材料であるポリエチレンテレフタレート(PET)も分解に成功した。PETを安価な触媒と溶媒のみで分解できる方法は従来になかったことから、実用性の高い反応といえる。実際に、市販のペットボトルも、触媒濃度1mol%、反応温度150℃、反応時間4時間で単量体に完全に分解できたとしている。
本反応は市販のメタノールを溶媒にでき、空気中で反応できるという大きなメリットを持つことから、廃プラスチック問題(プラごみ問題)解決につながる社会実装に向けた研究の進展が期待される。