慶應義塾大学経済学部の大久保敏弘教授とNIRA総合研究開発機構は、新型コロナウイルス感染症拡大下の日本においてテレワークと就業者の労働や生活、意識に関する大規模全国調査を定期的に実施してきた。今回、2020年4月、6月、12月、2021年4月、9月、2022年2月に続く第7回目の調査結果を報告した。

 同調査にはこれまでに2万人超が参加し、計7回すべてに参加した継続回答者も3,100人以上に及ぶとしており、個々人の行動や意識の変化を観測することもできる。また、今回の調査では、ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識についても調査した。

 まず、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえては、クリーンエネルギーへのシフトや食料自給率を高めることによって、国内での資源調達や食料確保を促進することに対して賛成する考えが強まっていることが認められた。ロシア産の商品の購入を控える、ロシアからの輸入を減らす、ロシアへの経済制裁を強化することについては、約50%の人が賛成した。防衛費の増大に賛成する人の割合は33%で反対の人の割合(16%)を上回り、日本政府によるウクライナに対しての武器供与に賛成する人の割合は20%で反対の人(29%)よりも少なかった。

 テレワーク利用率に関しては、2020年6月以降おおむね横ばいで推移してきたが2022年1~5月にかけて緩やかに低下し、5月4週目は15%だった。テレワークは一定の水準で定着しているものの、出社に戻る動きが若干出ているといえる。一方で、テレワーク利用者のテレワーク利用希望(「毎日出勤したい」人以外の合計)は直近になるほど高まっており(2022年5月は90%)、労働者側と企業組織側とのテレワーク利用の考え方のミスマッチが拡大傾向だ。

 政府の政策については、感染対策よりも経済対策を支持する傾向が一貫してみられ、2022年5月では一層顕著だった。

 本報告は速報であるが、こうした統計調査と記録は、政策の評価や議論において重要なエビデンス(証拠)となると考えられる。

論文情報:【公益財団法人NIRA総合研究開発機構】第7回テレワークに関する就業者実態調査(速報)「ウクライナ危機をめぐる安全保障に関する意識調査」を含む

慶應義塾大学

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