世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人である日本ロレアル株式会社は、2022年度第17回「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」の受賞者4名の発表および授賞式を2022年9月7日に国際連合大学 ウ・タント国際会議場にて実施した。受賞者には奨学金100万円が贈られる。
2005年に創設された本賞は、日本国内で物質科学、生命科学の2分野における博士後期課程に在籍または同課程に進学予定の女性科学者を対象としており、各分野からそれぞれ2名を毎年選出している。
「物質科学」分野で受賞した1人目は、広島大学大学院 先進理工系科学研究科 助教・片山春菜氏(25歳)。電気回路ブラックホールから放出される特異な量子相関を持ったホーキング輻射の研究で、量子コンピュータなど次世代情報処理・通信の実現に貢献したことが評価された。
2人目は、東京大学大学院 工学系研究科 化学生命工学専攻 フッ素有機化学研究室 特任助教・木幡愛氏(28歳)。難治性疾患の治療に有効とされる核酸医薬の実用化・応用範囲の拡大に貢献したことが評価された。
「生命科学」分野で受賞した1人目は東北大学大学院 歯学研究科 歯科口腔麻酔学分野 水田研究室・佐々木晴香氏(28歳)。喘息の病態におけるメラトニンの関与を明らかにし、新たな治療薬の創薬基盤の確立に貢献したことが評価された。
2人目は、東京大学大学院 薬学系研究科 薬品作用学教室・野口朝子氏(28歳) 。神経活動の多様性を増幅する仕組みを解明し、限られた細胞で膨大な情報を処理する神経システムの理解に貢献したことが評価された。(年齢は2022年9月7日現在)
審査において、物質科学は研究テーマの多様化に伴い、数学や数理科学などより幅広い内容に対応できるよう体制を強化。純粋に科学的な成果、とりわけ応募者自身の貢献度が重要視され、自身の考えに基づいて現象を考え解釈したか、技術的な工夫が施されたかなどが評価された。生命科学では、疾患患者の観察から新しい視点を発見する、独自の実験系を組み立てて研究を進めるなど、新たな視点や発想から優れた成果を得た研究者が特に評価された。
また、今回は山形県立米沢興譲館高等学校の生徒をオンラインで招き、科学や教育分野の有識者とのパネルディスカッションを併催。OECD加盟国最低とされる日本の女性研究者の割合の大きな要因とされている「研究や科学は男性のもの」といったジェンダーによるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を払拭するための最適解などについて対話を繰り広げた。