文部科学省は、極端な気象現象(以下、「極端現象」)の発生確率に対する地球温暖化の影響を迅速に見積もるための新しい手法を考案し、令和4年6月下旬から7月初めの記録的な高温に地球温暖化の影響が大きく寄与していたことを速報で伝えた。

 本研究は、文部科学省の気候変動予測先端研究プログラムと気象庁気象研究所が協力して、近年頻発する異常気象の発生確率と強さに人為起源の地球温暖化が与えた影響を定量化する“イベント・アトリビューション(EA)”の研究の一つである。これまでEAでは、気候モデルを用いて、温暖化した気候状態と温暖化しなかった気候状態を大量のシミュレーションによって比較するために、結果が出るまで数か月を要していた。そこで、迅速に情報発信ができるよう、「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース」に蓄積された多数の計算例を活用するとともに、モデルに与える境界条件(海面水温や海氷の状態など)を気象庁の3か月予報データから得る新しい予測型EA手法を考案した。この手法では、EAに必要な大量のシミュレーションを予め用意することが可能となり、情報発信までに掛かる時間を大幅に短縮できるようになった。

 本手法を、令和4年6月下旬から7月初めの記録的な高温現象に適用した結果、この時期の日本ではラニーニャ現象等の影響が重なって発生確率が19.8%まで上昇していたことがわかった。他方、地球温暖化の影響を取り除くと、今回の高温事例の発生確率は0.082%だった。つまり、人為起源の地球温暖化がなければ1200年に1度という非常に稀な現象が、今夏の状況下では約5年に1度の頻度にまで発生確率が上昇していたことになる。

 このように、予測型EA手法により、極端現象発生後に迅速に地球温暖化の影響を評価して情報発信することが可能となったことから、文部科学省では、EAの対象をさらに拡張した研究も進め、気候変動適応対策の推進に取り組むとしている。

参考:【文部科学省】令和4年6月下旬から7月初めの記録的な高温に地球温暖化が与えた影響に関する研究に取り組んでいます

大学ジャーナルオンライン編集部

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