東京大学大学院経済学研究科の飯塚敏晃教授、公共政策学連携研究部の重岡仁教授は、子ども医療費助成の情報とレセプト(診療報酬明細書)データから子ども医療費にゼロ価格効果が存在することを見つけた。

 東京大学によると、ゼロ価格効果は物やサービスの価格が無料になると需要を大きく増やすことを指す。飯塚教授らは人口の多い6県294市町村の医療費助成情報を2005年から2015年まで収集し、日本医療データセンターの6~15歳のレセプトデータと結合して分析、子ども医療費にゼロ価格効果が存在するかどうかを調べた。

 その結果、自己負担ゼロのときに月に1回以上外来受診する確率は43.9%だったが、わずかな額でも自己負担があると外来受診が減ることが分かった。その一方で、少額の自己負担がより大きな自己負担に変わっても、需要の減少幅大きくならないことも明らかになった。

 子ども医療費にゼロ価格効果が存在するわけで、自己負担が発生することで外来受診が減ったのは、比較的健康にもかかわらず、頻繁に医師の下を訪れているケースだった。これに対し、健康状態が良くない子どもの受診は減少しなかった。

 全国で多くの地方自治体が子ども医療費をゼロにする取り組みを進めているが、飯塚教授らは子ども医療費をゼロにすることが不必要な医療を増やす可能性があるとみており、政府が今後、医療サービスの価値※に基づいて「無料」と「無料以外」を戦略的に使い分ける必要があるとしている。

※日本では既に無料で提供されているワクチン接種等の予防的医療の多くを除き、医療分野の文献に基づき、肥満、注意欠如・多動症、思春期うつ病の診察等の予防医療を「価値が高い医療」、不適切な抗生物質が処方される場合を「価値が低い医療」とした。

論文情報:【American Economic Journal: Applied Economics】Is Zero a Special Price? Evidence from Child Healthcare

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