名古屋大学博物館の藤原慎一助教は、四足歩行を行う動物の胴体が、肩甲骨から肋骨に伸びる筋肉で吊り下げられた状態でバランスをとっていることに着目して、肩甲骨の正しい位置を解明した。絶滅動物の正確な骨格復元が期待される。
動物の肩甲骨と胴体は、関節ではなく筋肉を介して結合している。筋肉は化石に残りにくく、絶滅動物の骨格復元で、胴体に対する肩甲骨の位置決定は難題だった。実際、博物館展示での恐竜やマンモスの骨格復元での肩甲骨の位置はまちまちで、肩の高さや前肢の向きにも影響する。
四足歩行動物の胴体は、重力や肩甲骨から伸びる筋肉の作用によって、股関節を中心に回転する。重力が働くと、胴体は股関節を中心に下向きに回転して頭部が地面に墜落するが、肩甲骨から伸びる筋肉が働くと胴体を肩甲骨の方向に引っ張る。この方向は、肩甲骨と胴体の位置関係で決まり、2つの回転力が均衡していると、胴体がぶれずに安定した歩行ができる。
また、胴体は肋骨を介して肩甲骨から伸びる筋肉(腹鋸筋)によって吊り下げられているため、そのような肋骨は複数の肋骨のなかで胴体全体の重量に耐える最も折れにくいものと推測された。
そこで、現生の四足歩行動物のCT撮像データから三次元筋骨格モデルを作って解析した。その結果、条件に適う肩甲骨の位置は、胴体前方の正中(体を左右にわける面)寄りの特定の場所にしかないことが示された。また、この肩甲骨の位置は現生の四足歩行動物のほぼすべてに共通していた。
今回の研究から、これまで根拠なしに復元されてきた肩甲骨の位置に初めて根拠を示すことができ、絶滅動物のより確からしい生態復元に大きく貢献すると期待される。