東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座は、株式会社エムティーアイが運営する健康情報サービス『ルナルナ』と共同で、「子宮頸がん」についてアンケート調査などを実施した。回収回答数2,044名(20歳以上の女性)。
調査によると、子宮頸がんを予防する効果のある「HPVワクチンを接種したことがあるか」を聞くと、全体では「接種したことがある」15.9%、「接種したことがない」83.4%となり、8割以上の人が受けたことのない結果となった。年代別にみると、20代では「接種したことがある」52.2%と半数以上に接種経験があるが、30代以降は「接種したことがない」が9割以上だった。HPVワクチンは、平成25年度から定期接種(公費助成)となり、小学校6年から高校1年相当の女子であれば公費で接種が可能。そのため、現在20代の人は定期接種として受けた経験がある人が多いと考えられる。
「子宮頸がん検診を受けたことがあるか」について、全体では「検診を受けたことがある」78.6%だった。年代別で見ると、30代以上は8割以上が受けたことがあると回答しているのに対し、20代は56.3%と約30ポイント近く下がる結果に。また、「聞いたことがあり、内容も知っている(検診は受けたことがない)」16.5%と「聞いたことはあるが、内容は知らない」26.6%を合わせると、20代女性の4割以上は子宮頸がん検診を受けたことがないことが分かった。
子宮頸がん検診について「聞いたことがあり、内容も知っている(検診は受けたことがない)」と回答した人を対象に、受けてこなかった理由を聞くと、1位が「検査に伴う苦痛に不安があるから」37.7%、2位が「受ける時間がないから」33.8%、3位が「費用がかかり経済的にも負担になるから」22.3%だった。
また、がんの治療法のひとつである放射線治療と子宮のがんに関するクイズを実施したところ、クイズの正答率は、ヘルスリテラシー(医療に関する正しい情報を取捨選択する能力)が高い人ほど上昇することが分かった。年齢による差はなく、学歴や年収、がんの罹患歴、家族の放射線治療歴などを加味しても、それぞれのクイズ正答率はヘルスリテラシーの高低が最も強く関係しているという結果となった。
東京大学医学部附属病院放射線科総合放射線腫瘍学講座の中川恵一特任教授は「子宮頸がんは性交渉によるHPVが原因のほぼ100%で、17歳より前にワクチンを接種すれば発症率が12%になるという報告もあり※、そのデータから考えるとHPV予防ワクチンで発がんの約9割を予防できる可能性があります。今回の結果では、健康に関心が高いルナルナユーザーでも、推奨通り子宮頸がん検診を受けているのは3割程度にとどまっていました。放射線治療ではがんの完治は困難、保険がきかない、などの誤った印象も多くみられました。今後は、ヘルスリテラシーの向上に向けた取り組みの他、ワクチンの効果や副反応についてもさらなる啓発が必要だと思います」とコメントした。
※Jiayao Lei, Ph.D., Alexander Ploner, Ph.D.,et al.HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer.N Engl J Med 2020;383:1340-8.
参考:【株式会社エムティーアイ】ルナルナ通信 「子宮頸がん」に関する意識調査 ~個々のヘルスリテラシーが、がんや治療法の正しい知識にも影響~ (PDF)