理化学研究所の寺尾知可史チームリーダー(静岡県立大学特任教授)らの研究グループは、東京大学大学院と共同で2021年に発表したアトピー性皮膚炎を対象にした最大規模のゲノムワイド関連解析の結果を用いて、日本人のアトピー性皮膚炎の発症年齢の遺伝基盤を解明した。
発症年齢によるアトピー性皮膚炎の症状の違いは報告されているが、その原因は不明だ。また、発症年齢に対する遺伝的関与はさまざまな疾患で研究されているが、アレルギー疾患ではほとんど例がなく、とりわけアトピー性皮膚炎においては、主にヨーロッパの集団を対象とした限られた既報があるのみだった。そのため、アジア人集団における全ゲノムレベルで発症年齢の遺伝基盤の解明が求められていた。
そこで共同研究グループは、2021年に報告した、バイオバンク・ジャパンに登録されている約2,600人のアトピー性皮膚炎患者のデータを用いて行った大規模なゲノムワイド関連解析の結果を活用し、発症年齢の基盤となる遺伝子構造を調べた。
その結果、(1)特に日本人で遺伝的多型の頻度が高い遺伝子座であるNLRP10遺伝子のリスクアレル(対立遺伝子座)を持つと発症年齢が約3年早まること、(2)アトピー性皮膚炎は年齢依存的な多遺伝子構造を示し、遺伝的リスクが高いほど発症が早まること、(3)17カ所の疾患感受性領域(発症関連領域)それぞれにおいて、発症年齢に及ぼす遺伝的影響の強さが異なることを解明した。
これらの結果は、発症年齢によるアトピー性皮膚炎の病態解明につながり、それぞれの病態に応じた新しい治療法や予防法の開発、遺伝的に発症するリスクの大きさによって層別化された早期介入への貢献が期待されるとしている。
論文情報:【Journal of Investigative Dermatology】Genetic architectures underlie onset age of atopic dermatitis