北海道大学大学院(長谷川貴章氏ら)と東京農工大学(高田秀重教授ら)の研究グループは、魚類がマイクロプラスチックの摂取を通じて、プラスチック製品に含まれる添加剤を筋肉や肝臓などの体組織に取り込み蓄積することを、世界で初めて実証した。
海洋のプラスチックごみ、特に細分化されたマイクロプラスチック(粒径5mm以下)は、海洋動物に取り込まれると物理的・生理学的な悪影響を与える。また、プラスチック製品は様々な化学物質(臭素系難燃剤や紫外線吸収剤などの添加剤)を高濃度に含有する。魚類はマイクロプラスチックを海水中と餌生物の2経路から取り込むことで、添加剤が体組織に移行・蓄積すると考えられていた。
そこで研究グループは、肉食性魚類シモフリカジカとその餌生物である小型甲殻類イサザアミ類を用いて、魚類のマイクロプラスチック摂取による添加剤の組織への移行について、両経路の相対的重要性を検証した。
その結果、マイクロプラスチックに含まれる添加剤が水中と餌の2経路によりカジカの組織に蓄積することが実証された。マイクロプラスチックを含むアミを摂食させた個体の筋組織からは、海水中にマイクロプラスチックを曝露させた個体や野外から採集直後の個体より、非常に高い濃度の臭素系難燃剤が検出された。一方、紫外線吸収剤の濃度は摂食と水中曝露の両個体間で有意差はなかった。添加剤の疎水性などの化学特性の違いが関与しているとみている。
マイクロプラスチックを通じて魚類の体内組織に蓄積した添加剤は、食物連鎖を通じて人間を含む高次消費者の体内に濃縮され悪影響を与える可能性がある。今後の研究進展による一層の解明が期待されるとしている。