長野県茅野市の諏訪東京理科大を運営する学校法人東京理科大学(東京)は、学生の定員割れが続く諏訪東京理科大学の公立化を求める要望書を地元の茅野市に提出しました。18歳人口の減少が始まる2018年を前に、公立化で財政基盤を強化して授業料を引き下げ、学生を確保するのが狙い。工学系の単科大学として運営することも視野に入れており、今後長野県や諏訪広域連合とも対応を協議します。

学校法人の本山和夫理事長と諏訪東京理科大の川村洋学長らが市役所に柳平千代一市長を訪ねた。本山理事長は「少子化が進む中、地域に不可欠な存在として存続、発展していくためには、公立化の検討が必要」と述べ、要望書を提出しました。これに対し、柳平市長は「諏訪圏内、長野県にとって、なくてはならない大学であり、しっかりと検討していきたい」と今後の協議に前向きな姿勢を示しました。

諏訪東京理科大学は2002年の設立。工学部、経営情報学部の2学部4学科を持ちますが、2006年から学生の定員割れが続いています。前身の同大短大が開学した1990年以降の累積赤字は約16億円に達し、経営の悪化に苦しんできました。
このため、2014年4月から大学側の申し入れにより、市と今後の大学のあり方について協議を始めました。その後、協議に長野県も加わり、計6回の意見交換を重ねています。これまでの協議結果は報告書として公表し、本格的な対応検討に入る見通しです。
大学が公立化されれば、これまでの私学助成金より手厚い地方交付税交付金が得られます。このため、大学側は授業料の引き下げが可能になり、学生の獲得競争に有利になると期待しています。これに対し、市は大学が地域振興に必要な存在と認識し、近隣市町村、経済界、有識者らの聞いたうえで、公立化の是非、設立主体となる自治体の枠組み、移行時期などについて、対応を検討する考えです。

諏訪東京理科大学に限らず、地方の私立大の多くが学生の定員割れと経営悪化に苦しんでいます。18歳人口は現在、横ばい状態ですが、2018年から再び急激な減少が予想されています。これがいわゆる「大学の2018年問題」です。このため、高知県の高知工科大、鳥取県の鳥取環境大など公立化した私立大が相次いでいるほか、北海道の旭川大、新潟県の新潟産業大など公立化を計画するところが目立っています。

大学ジャーナルオンライン編集部

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