名古屋大学の飯島弘貴YLC特任助教らの国際共同研究グループにより、変形性膝関節症は加齢に伴い硬くなった関節軟骨が長寿タンパク質を抑制することで発症することが明らかになった。研究には、米国のハーバード大学、ピッツバーグ大学、メイヨ―クリニック、カリフォルニア工科大学、および京都大学が参加している。
関節軟骨は加齢により、細胞外基質の構成成分や構造が変化する。細胞外基質のリモデリングにより、コラーゲン線維の増大やコラーゲン線維同士の架橋形成が生じ、組織の硬さが加齢依存的に増大する。加齢に伴う組織の物理特性変化は、異常な機械的シグナル伝達を介して組織細胞の老化や機能低下を生じるとされるが、その背景にある分子メカニズムは不明だった。
研究グループは、α-Klotho(クロトー)と呼ばれる長寿タンパク質に着目し、加齢によって発現が減少するα-Klothoの関節軟骨における機能解析を進めてきた。その結果、加齢に伴い硬くなった軟骨組織がα-Klothoの発現を低下させ、変形性膝関節症を誘発することが判明した。
さらに、この加齢に伴うα-Klothoの発現低下は、細胞を取り巻く細胞外基質の物理特性の変化によってDNAメチル基転移酵素が多く動員され、α-Klothoプロモーターメチル化が促進された結果であることも分かった。これらの研究成果により、細胞外基質の物理特性やその機械的シグナル伝達、α-Klothoが軟骨治療の新規治療標的となり得るという。
今回、根治治療が未だ存在しない変形性関節症の病態解明や治療法開発の可能性が示された。また、加齢による組織の硬さ増大は関節軟骨に特化した特徴ではないため、他の臓器における加齢性疾患の病態解明にも貢献する可能性があるとしている。