京都大学らの研究グループは、1量子ビットしか使えない「弱い」量子コンピューターでも古典コンピューターより「強い」ことを、初めて理論的に証明した。
量子コンピューターとは、ミクロの世界を説明する物理理論「量子力学」に基づいて動作するコンピューターのこと。現在我々が使っている「古典コンピューター」を遥かに凌駕する超高速計算が可能であるとされる。
しかし、大量の量子ビットを自由自在に扱える巨大な万能量子コンピューターの実現は、まだ遠い未来のこと。そこで、近い将来に実現できるレベルの「弱い」量子コンピューターでも、古典コンピューターに対する優位性(量子スプレマシー)を持つことを示そうとする研究が盛んに行われている。
例えば、「one-clean qubitモデル」は、1998年に提案された最も古い「弱い」量子計算モデルの一つ。1量子ビットしか使えず、弱そうに見える一方、Jones多項式の計算など、古典コンピューターで効率的に計算する方法が知られていない量を効率的に計算できることが示されている。しかし、Jones多項式を計算する効率的な古典アルゴリズムが発見されれば、one-clean qubitモデルの古典に対する優位性はなくなるため、確かな量子スプレマシーとは言えない。
こうした中、研究グループは新しい手法を用いてone-clean qubitモデルの優位性の理論的証明に初めて成功。さらに、今回発見した手法は他のタイプの弱い量子計算モデルにも応用可能で、それらのモデルについても従来より強固な計算量理論的基盤で量子スプレマシーを証明することに成功した。
本成果は、世界中で進む量子スプレマシー研究の理論的基盤を整備するものであり、今後の量子計算研究の発展に大きく寄与すると期待されている。