長く一般に「酒を飲める人が所得を上げる」といわれてきたが、その考えが間違っていることを、東京大学大学院公共政策学連携研究部の川口大司教授と、一橋大学、韓国ソウル大学、国立台湾大学の研究グループが解明した。東アジアの男性成人のデータを用い、酒を飲めるかどうかが所得や労働時間に与える影響を調べた結果で、「飲みニケーション」に所得アップ効果は期待できないとしている。

 東京大学によると、研究グループは日本約2,000人、韓国約1,000人、台湾約500人の働く男性を対象にアルコールパッチテストと呼ばれるアルコール耐性を調べる調査を実施、耐性があり、酒を飲める人とそうでない人の所得や労働時間を比較した。

 その結果、酒を飲める人とそうでない人の間に所得や労働時間の統計的に有意な差が見られないことが分かった。一般にビジネスコミュニケーションを飲酒が円滑化し、所得を向上させる効果を持つといわれてきたが、調査結果を見る限り、そうした効果は全く期待できないことが明らかになった。

 飲みニケーションは酒を飲むとコミュニケーションを合成した言葉で、昭和の時代にビジネス現場でしばしば用いられた。酒に酔って脳がマヒすることで抑止力が低下して本音で話ができ、ビジネス成功につながるといわれていた。

 経済学者がこの論理の究明を試みた研究は数多くあるものの、分析結果が仮定に大きく依存するなどの問題があった。このため、研究グループは遺伝的に決定されるアルコール耐性を使い、所得との関係を探った。

論文情報:【Health Economics】Is Asian Flushing Syndrome a Disadvantage in the Labor Market?

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