東京工業大学、北海道大学、東京大学、京都大学のグループは、弾性波を使うことで、飼料用トウモロコシ茎部の変形しやすさを非破壊的かつ迅速に、高精度で計測する新技術を開発することに成功した。
国産飼料用トウモロコシの生産には、台風や豪雨によりトウモロコシが倒れ伏す「倒伏」という現象が課題の一つとされる。倒伏は穀実作物に広く発生し、収量と品質を低下させ、作業速度の大幅な低下を引き起こす。一方、飼料用トウモロコシの生産を経済的に成り立たせるには、大規模で効率的な生産を実現する必要があり、倒伏の発生回避は重要な課題だ。
これまでの穀実作物の倒れにくい性質をもつ系統(耐倒伏性系統)の選抜では、材料試験機を用いた破壊的検査が行われてきた。この方法は、ほ場から個体単位で茎葉部を刈り出し、茎部断片を作成し、新鮮なうちに曲げ試験により強度を求める必要があるため、トウモロコシの育種への適用は困難であった。
研究グループは、地震工学に着想を得た超小型センサーアレイを開発し、物理数値シミュレーションと組み合わせて、トウモロコシ品種のヤング率(かたさ・やわらかさを表す値の一つ)を迅速・高精度に評価する手法を提案。研究では、トウモロコシ地際部(じぎわぶ)を軽く叩いて発生させた弾性波(組織内部を伝搬する波)を、茎に取り付けたセンサーアレイで観測・解析して0.1秒以内に茎部のヤング率を計測した。さらに、物理数値シミュレーションと、ほ場試験とにより、新技術で得られたヤング率の妥当性を確認した。
今回の研究成果がイネ・コムギ・ダイズなどにも応用され、台風や豪雨でも倒れにくい品種の育成に役立つことが期待されるとしている。