横浜市立大学大学院国際マネジメント研究科の原広司准教授らの研究グループは、横浜在住の結婚・子育て世代1万世帯を対象とした大規模なアンケート調査(ハマスタディ)を実施し、フルタイム勤務の夫婦における家事・育児時間、家事の外部化・自動化と家事時間との関係などを明らかにした。

 本調査は、2022年度から2026年度までの5年間に渡る大規模なコホート研究であり、横浜市をはじめとした都市型の少子化の要因を家庭と子育ての観点から継続的な調査によって明らかにすることを目的としている。研究成果によって、家庭と子育ての現状の把握とともに、子育てしやすいまち、政策づくりへの提言につなげる。調査対象は、横浜市在住の結婚・子育て世代(妻が20歳~39歳)1万世帯の夫婦2万人。2023年1月から調査票を送付し、3272世帯、5458件の回答が得られた(世帯の回収率32.7%、女性の回収率27.0%、男性の回収率25.4%)。

 調査によると、フルタイムで働く妻の平日の家事時間はこどもがいない家庭で1.8時間に対し、こどもができると2.2~2.5時間に増加。夫はこども数と家事時間に関連がみられず、妻の家事時間のおよそ半分だった。お惣菜などを利用する家事の外部化、あるいは家電製品の進化による家事の自動化は広く一般に普及している。調査では、食洗器、ロボット掃除機、全自動ドラム乾燥機、電気調理鍋、お惣菜(週1回以上)の利用状況を把握し、これらの導入数ごとの女性の平日家事時間を比較。その結果、導入数が多いほど、家事時間が減少する傾向がみられ、これらのサービスや家電の利用は女性の家事時間の削減に寄与する可能性が示唆された。

 フルタイム勤務をする妻の平日の家事・育児時間とWell-being(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念)の関係を検証すると、妻の家事時間が長くなるにつれて、Well-beingは悪化する傾向がみられた。一方で、育児時間とWell-beingではこうした関係は確認されなかった。この結果から、妻のWell-beingに対して家事時間が関連している可能性が示唆された。

 妻の勤務状況を専業主婦、有職(フルタイム以外)、有職(フルタイム)の3つに区分し、「現在+予定こども数」、「理想こども数」、「理想こども数とのギャップ」を算出。なお、夫はいずれのカテゴリーでも有職(フルタイム)がほとんどだったため、区分はしていない。専業主婦の場合の理想こども数とのギャップは-0.28、有職(フルタイム以外)は-0.27、有職(フルタイム)は-0.36となり、有職(フルタイム)でギャップが大きい傾向だった。ただし、統計的な有意差は認められなかった。

 2022年度から2026年度までの5年間にわたるコホート調査であるハマスタディ研究。本結果は1年目のWave1の調査結果であり、2023年度中にWave2、2024年度以降もWave3~5と継続して実施、分析を行う。Wave2以降は、政策の変化や各家庭の変化などを捉え、その変化と各指標との関連を明らかにする。本調査の結果は横浜市にもフィードバックし、今後の政策等の検討に活用していく。なお、本研究のプロトコルは、プレプリントサーバーのResearch Squareに投稿し、公開された。(5月5日オンライン)。今回の報告では、夫婦の家事時間と育児時間に焦点をあてた分析結果を中心に報告している。

参考:【横浜市】横浜市立大学と連携したハマスタディ調査結果について

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