立教大学異文化コミュニケーション研究科山田優研究室と八楽株式会社、株式会社タチエスは共同で、AI翻訳を英語力向上へ活用する実証実験(MTILT)を実施し、参加者の英語力に変化があることを立証した。

 Machine Translation In Language Teaching(通称:MTILT)とは、語学学習における機械翻訳の活用を意味する。近年のChatGPTなどのAIや機械翻訳(MT)の目覚ましい発展により、語学を習得する必要性が問われ始めており、今回実証実験を実施した山田優研究室は「これからはAIや機械翻訳を使いこなすためのスキルであるMTリテラシーを身に付けることが重要だ」と述べている。

 実証実験に参加したタチエスは従業員に英語学習の研修を積極的に実施している。年々海外子会社が増加し、社内コミュニケーションは日英両方で行われるようになり、社員の「英語力(英語で業務を遂行する力)」の向上が大きな課題となっていた。そこで立教大学、八楽と共同で、八楽が開発したAI翻訳プラットフォーム「ヤラクゼン」を用いて社内向けに講義を行うMTILTの実証実験を実施することにした。

 MTILT実証実験は、英語の習熟度CEFRA2~B1のレベル(TOEIC Reading & Listeningのスコアをもとに概算)の20名が参加した。参加者は、普段は開発業務で多忙であり学習に割ける時間はあまりないが、機械翻訳の特徴や使用方法についてはある程度のMTリテラシーを持っている人が多かった。

 実証実験2022年11月から2023年2月までの約4カ月間、隔週1回、各回1時間程度を全7回実施した。講義内容は主にプリエディット(機械翻訳が翻訳しやすいように原文を修正する作業)とポストエディット(機械翻訳で生成された訳文を人間の翻訳者が修正する作業)の概要と方法を学ぶほか、機械翻訳を使用する際に知っておくべき知識(機械翻訳の仕組みや言語学的知見)や機械翻訳がある時代に英語を学ぶことの意味や学習の指針なども扱った。

 実験の結果、「MTILTの講義を受け英語や翻訳への苦手意識が減ったり、英語を使うハードルが下がったと思うか?」の問いに、80%の受講者が英語への苦手意識が減ったと回答した。また、講義受講前「プリエディット」をする人は57.1%だったが、受講後、1.5倍増の85%が「プリエディット」するようになったと回答した。機械翻訳の活用方法を習得したことで、英語に対する意識、および英語対応力に変化が出る結果となった。

 実証実験に参加した立教大学山田研究室は「外国語学習や翻訳作業を行うには、たとえば、『辞書を引く』といった行為が重要になります。辞書を読む、もしくは複数の辞書を引いて訳語を比較するといった類の行為です。このとき、電子辞書や紙の辞書を含む参考資料にアクセスすることが億劫になると、辞書を引く回数が少なくなってしまうでしょう。これと同様に、その他の電子ツールへのアクセス方法や使いこなすスキルが備わっていないと、それを使うことすらできなくなります。まずはこういった側面に関する意識改革やちょっとしたコツを習得することで、英語学習に対する全体的な苦手意識が軽減されるのかもしれません」とコメントした。

参考:【八楽株式会社】八楽、立教大学、タチエスがAI翻訳を英語学習に活用する実験結果を発表

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