立教大学現代心理学部の浅野倫子准教授と東京大学大学院人文社会系研究科の横澤一彦教授は、文字に特定の色を感じる「色字共感覚」において、文字に感じる色(共感覚色)は文字の読みや意味の情報と密接に結びつき、文字についての知識が変化すると「共感覚色」も更新されることを初めて明らかにした。

 「色字共感覚」とは、文字を見ると特定の色の印象を感じるという認知特性のことで、一般人口の1~2%の人が持っている。従来、文字と共感覚色の組み合わせは安定しており、例えば、『り』という文字はいつでもローズピンク色というように、変化しないと言われてきた。

 また、近年の研究では、「詩」「史」「視」のように同じ読みの文字は似た共感覚色を持ちやすかったり、「桜」という文字の共感覚色はその意味通りの薄ピンク色になりやすかったりと、文字の読みや意味が共感覚色を左右するケースが多々あることも分かってきた。

 しかし、これまでの研究では共感覚色の時間的安定性の高さが注目されることが多く、共感覚色が変化するかについては明らかではなかった。そこで研究チームは、共感覚色が文字に関する知識(読みや意味など)の内容と深く結びつき、新しい読みや意味を覚えた際に共感覚色も更新されるかを明らかにしようと実験を行った。

 実験では、日本語を母語とする大人の色字共感覚者に、すでに知っている漢字について、その人が勉強したことのない中国語での読みや意味を学習してもらった。すると文字の新しい読みや意味の学習により、その文字の共感覚色がわずかながらも変化することが分かった。一方で、新しい知識を学ばなかった文字では共感覚色に変化は見られなかった。

 これらの実験結果から、色字共感覚と言語処理の間には密接な関係があり、共感覚色は文字についての知識の変化に伴って更新されうることが初めて明らかになった。今後、色字共感覚のメカニズムの解明を通して、多様さを持った人間の認知処理メカニズムの全貌解明に一歩近づくことが期待される。

論文情報:【Philosophical Transactions of the Royal Society B】Synaesthetic colour associations for Japanese Kanji characters: from the perspective of grapheme learning

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