名古屋大学と米国のカリフォルニア大学、ミシシッピ大学、テネシー大学などの研究者のグループは、血液透析を受けている腎臓病患者を対象とした解析で、残存腎機能が低いほど死亡リスクが有意に上昇することを明らかにした。
腎不全の患者では、腎臓の働きが低下するため体内の老廃物や余分な水分を十分に排泄できず、血液透析等の腎代替療法を受けないと、体にたまった老廃物によって尿毒症が起きたり、過剰な水分が心臓の負担となって心不全が起きたりする。医療技術や透析機器の進歩に伴い、腎不全患者の予後は以前よりも改善しているが、依然として透析患者の5年生存率は胃がんや悪性リンパ腫を患うがん患者と同等か、それ以下だという。
本研究では、全米規模の大規模な透析患者のデータを用いて、残存する腎機能と、心臓突然死を含む心血管病死亡および非心血管病死亡リスクとの関連性を解析した。対象は、2007年から2011年にかけて新たに血液透析を開始した約4万人の末期腎不全患者とし、血液透析を開始した時点での残存腎機能(腎尿素クリアランスもしくは1日尿量)が低い順にグループ分けを行って死亡リスクを評価した。
その結果、中央値548日の追跡観察期間中に、2,772件の心血管病死亡(1,905件の心臓突然死を含む)および2,198 件の非心血管病死亡が発生し、死因に関わらず、残存腎機能が低いグループほど高い死亡リスクを認めた。二次解析では、透析開始後6ヶ月後の腎機能低下が大きい(1日尿量を失う速度が早い)ほど、心臓突然死および非心血管病死亡リスクが高くなる傾向を認めた。また、残存腎機能が低い患者は、栄養指標の一つである標準化蛋白異化率が低い傾向があることがわかった。
この結果から、わずかに残存する腎機能すらも、余命と栄養に大きな影響を与えており、腎臓の役割がいかに重要であるかが改めて浮き彫りになった。今後は、腎臓病患者のわずかでも残っている腎機能を保つための治療戦略を開発する必要性が明らかになったといえる。