京都大学iPS細胞研究所/高等研究院、静岡社会健康医学大学院大学、広島大学大学院の研究グループは、日本の一般市民と科学者にヒトゲノム編集の利用に関して行った質問紙調査の結果を発表した。
ゲノム編集技術は不妊・遺伝性疾患・難治性疾患の原因解明や治療法開発等につながるが、ヒトへの応用では、特に日本で安全性の確認や倫理的課題の検討が不十分だ。そこで研究グループは、ヒトゲノム編集について日本の一般市民と科学者にオンライン調査を実施、以下の結果を得た。
研究目的でのヒトゲノム編集については、「いかなる目的でも認められない」は、一般市民では28.2%~36.9%、研究者では精子・卵子、余剰胚、体細胞に対し5.1%~9.2%、研究胚で25.5%。「目的次第で認められる」の回答者のうちゲノム編集の対象別許容度は、一般市民では、不妊症・難治性疾患等の研究は50.4%~63.4%が容認も、ヒト対象の基礎研究では39.3%~42.8%と低下。研究者では、不妊症・難治性疾患・基礎研究は73.6%~90.8%が容認も、慢性疾患研究では60.9%~66.7%と許容度は低下。
医療目的でのゲノム編集の利用に関しては、誕生前の子の遺伝形質改変は、一般市民・研究者の順に「目的次第で認められる」が49.3%・56.1%、「いかなる目的でも認められない」が45.8%・40.8%、「いかなる目的でも認められる」が5.0%・3.1%。一方、誕生後の人のゲノム編集は、「目的次第で認められる」 が63.6%・89.8%だが、「いかなる目的でも認められない」が32.6%・3.1%と差が大きい。次に、「目的次第で認められる」の回答者では、一般市民も研究者も、誕生前・誕生後ともに、疾患治療目的で許容度が高い傾向で、知性・体質・性格等の改良目的では許容度は顕著に低い。
総じて、一般市民は研究者ほどゲノム編集技術の利用を許容していない実態が示された。