熊本大学薬学部と崇城大学薬学部は、デジタルテクノロジーを駆使しながら地域課題に対応できる薬剤師の職能開拓ならびに医療人材育成を目指し、「オンライン服薬指導システム」と「オンライン服薬期間中フォローシステム」を活用した薬学教育の取り組みを行う。両大学は、文部科学省実施の「地域の医療ニーズに対応した先進的な薬学教育に係る取組支援事業」に選定されている。
近年、少子高齢化の加速などを背景に薬学教育においては、へき地医療や災害医療といった地域からのニーズに対応できる人材の育成が求められている。熊本県は薬剤師不足が起きている地域であり、厚生労働省が2020年に報告したデータによると熊本県の無薬局町村は5つ存在し、一部の地域住民は医療機関にアクセスしにくい状況になっている。また、2016年4月の熊本地震や同年6月の熊本豪雨といった自然災害のみならず、阿蘇山の火山活動が活発なエリアでもあり、甚大な災害発生時における医療体制の課題を抱えている。
そこで、熊本大学と崇城大学は、デジタルテクノロジーを駆使しながら地域課題に対応できる薬剤師の職能開拓ならびに医療人材育成を目指し、「オンライン服薬指導システム」と「オンライン服薬期間中フォローシステム」を活用した薬学教育の取り組みを行う。具体的には、株式会社カケハシが提供する薬局体験アシスタント「Musubi」、おくすり連絡帳「Pocket Musubi」、薬局業務見える化ツール「Musubi Insight」を活用し、医療DXを推進する。
薬局体験アシスタント「Musubi」は、 Musubiのタブレット端末を薬局の薬剤師が患者と一緒に見ながら服薬指導し、その場の画面タッチで薬歴のドラフトを自動で作成。さらに患者の健康状態や生活習慣にあわせたアドバイスを提示する。従来の電子薬歴とは異なり、薬歴業務の効率化と患者への提供価値の向上を実現できる。おくすり連絡帳「Pocket Musubi」薬局と患者をLINEでつなぐ患者フォローシステム。患者の服薬状況からフォローすべき患者をスクリーニングし、薬剤師が適切なアクションを負荷なく行える機能や、患者が来局前に処方せんの画像を送って薬局内の待ち時間を短縮できる機能などがある。薬局業務見える化ツール「Musubi Insight」は、Musubiのデータを使用して薬局経営上の重要な指標を可視化し、根拠に基づく薬局運営を実現する、薬局業務“見える化”クラウドサービス。薬歴完了率のような薬剤師の業務状況を表すデータから、売上をはじめとする店舗経営データ、処方箋数や再来率・新患率など患者との関係性を表すデータまで、薬局業務を可視化することで解決すべき課題の発見・把握を効率化し、適正な薬局運営をサポートする。
薬学教育における医療DXを推進することで、へき地医療や災害医療といった地域からのニーズに対応できる医療人材の育成に期待がかかる。