日本電気株式会社(NEC)と東北大学病院は、生成AIにおける日本語大規模言語モデル(LLM)を用いた医療文書自動作成の実証実験により、医療文書の作成時間半減と業務効率化の可能性を確認した。またNECと橋本市民病院(和歌山県橋本市)も同様の実証実験を2023年10月から実施中。
医療現場では人手不足が深刻化し医師や看護師への負担が増大している。一方、「医師の働き方改革」の新制度施行により勤務医の時間外労働時間に上限が設けられる。医療業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)による効率化が期待されている。
東北大学病院ではNEC開発の医療テキスト分析AIを活用し、電子カルテ上の患者の症状・検査結果・経過・処方などの情報を時系列に整理。NECのLLMを活用し、治療経過の要約文章を自動で生成可能とした。
同病院の実証(2023年10月~11月)では、紹介状や退院サマリに記載する要約文章の作成時間を新規作成より平均47%削減。文章の表現・正確性も評価が高かった。これにより、膨大な電子カルテ記録からの情報収集作業が大幅に軽減され、生成された要約文章からの効率的な文書作成の可能性が確認された。
橋本市民病院の今回の実証では、電子カルテの匿名化情報をNECの電子カルテシステムを介してクラウド上のLLMに安全・シームレスに連携し、個人情報の学習を避けながら要約文章を生成している。今後、長期治療経過の要約文生成や操作性の向上を目指すという。
NECは今後、LLM+音声認識による医療文章の作成支援や、医師に負担の大きい症状詳記(レセプトに加える補足説明)などの自動作成の実証も行う。また、電子カルテ上のボタンクリックだけで要約文を自動生成する機能も実装するとしている。
参考:【東北大学】NEC、東北大学病院、橋本市民病院、「医師の働き方改革」に向けて、医療現場におけるLLM活用の有効性を実証 ~医療文書の作成時間を半減し、業務効率化の可能性を確認~(PDF)