貸与型奨学金を受給した女子学生が将来、結婚のタイミングが遅くなり、出産する子供が少なくなる傾向にあることが、慶應義塾大学経済学部経済研究所の王杰特任講師、経済学部の赤林英夫教授らの研究で分かった。研究グループは奨学金の制度設計で家族形成への影響に配慮する必要があると提言している。

 慶應義塾大学によると、研究グループは慶應義塾大学経済学部のこどもの機会均等研究センターが2017年に企画し、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センターを通じて収集したデータのうち、20~49歳の対象者568人を分析した。

 その結果、貸与型奨学金の受給は男性の結婚確率などに有意な影響を与えていなかったが、女性の結婚には負の影響を及ぼしていることが分かった。受給した額自体は関係なかった。男性が持つ子どもの数にも影響は見られなかったが、女性が持つ子どもの数に負の影響を与えていた。

 貸与型奨学金は日本学生支援機構の奨学金拡大でこのところ、受給者数と受給額が急増している。受給率は1990年代に10%台だったが、近年は40%台にはね上がっている。40代半ばまでの成人のうち、4人に1人が奨学金を利用した計算になる。

 しかし、給付型奨学金は限定的で、大半は貸与型。その結果、毎年30万人以上の若者が奨学金の負債を抱えたまま、社会に巣立ち、暮らしや家族形成への影響を心配する声が出ている。

論文情報:【Studies in Higher Education】Student loan debt and family formation of youth in Japan

慶應義塾大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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