東京大学大学院の研究グループは、理化学研究所、筑波大学、木更津工業高等専門学校、プランツラボラトリーと共同で、植物工場の養液栽培で培養液を3℃加温することによって、根からの養分の取り込みとアミノ酸代謝が促進され、養液栽培レタスの生育とカロテノイドやビタミンCなどの機能性成分が向上することを明らかにした。
気温が光合成や植物の生育に大きな影響を与えることは知られているが、養液栽培の培養液温度(根圏温度)が植物の代謝や生育に与える影響については不明点が多い。同グループのこれまでの研究では、培養液を室温より数℃高くすると植物の生育と品質が向上する可能性を見出していた。そこで、人工光型植物工場で様々な室温で栽培したレタスについて、培養液の3℃加温による植物成長や機能性成分への影響を調査した。
その結果、全ての室温条件で培養液を3℃加温することによって、地上部乾物重と地下部乾物重が有意に増加。また、クロロフィル、カロテノイド、アスコルビン酸(ビタミンC)などの機能性成分が向上した。さらに、根と葉の両方で可溶性タンパク量や各種ミネラルも増加していた。
これらの結果から、培養液を3℃加温することで、根からの養分の取り込みが促進され、かつ、根では各種アミノ酸含量が増加しており根の代謝が活性化されることによって、養液栽培レタスの生育と機能性成分が向上することが分かった。
今回の研究成果により、作物の生産性と機能性成分を増産させる新しい栽培法の開発が期待される。今後、最小の資源とエネルギーの投入で、最大の収量と品質を得るシステムを確立し、環境負荷を最小限に抑える技術開発を進めるとしている。