早稲田大学とキユーピー株式会社の研究グループは、野菜を「噛(か)む」ことで、食後のインスリン分泌およびインスリン分泌を促すホルモンが刺激されることを確認した。野菜を「噛んで食べる」ことの重要性を、食後の代謝の視点より裏付けることを明らかにした。
食事の始めに野菜を摂取する食事法(ベジタブルファースト)は、食後血糖値の上昇を抑える働きがあることが報告されている。野菜に多く含まれる食物繊維によるものと考えられる。また、野菜が固形か液状かによって食後血糖値への影響は異なるとの報告もある。しかし、野菜を咀嚼(そしゃく)して摂ることが食後血糖値とインスリンやインクレチンなどのホルモンの分泌に及ぼす影響は不明だった。
そこで研究グループは、食前に固形の野菜を咀嚼して摂取することが食後の糖代謝に及ぼす影響について検証した。19人の健康な成人男性(平均22歳)を対象として、野菜(キャベツ)を「咀嚼して食べるとき」と「咀嚼せずに食べるとき」の食後における代謝への影響を調べた。
その結果、噛むことで食後の血糖値を下げるホルモンであるインスリンがしっかりと分泌され、その作用機序の一つとしてインスリンの分泌を促す作用を持つホルモンであるインクレチンが食後の初期段階で刺激されることを発見した。
研究グループは、若年者を対象とした今回の研究により、野菜を「噛んで食べること」でインスリンの分泌が刺激される可能性が示唆されたことには大きな意義があると強調する。最近は固い食べ物は敬遠され、やわらかい食品が好まれる傾向にある。意識して「噛む」ことが求められており、普段の生活の中の実践が期待されると述べている。