もやもや病は、東アジア(日・中・韓)で多い原因不明の難治性脳血管疾患である。脳への主要な血液供給路である内頸動脈が狭窄・閉塞を起こし、虚血で頭蓋内にもやもやとした煙状の毛細血管が発達する。虚血発作・脳梗塞を引き起こすことがあり、重篤な指定難病と一つとされる。
これまでに、もやもや病のリスク要因としてミステリン遺伝子の変異が見出されたが、そのはたらきや、もやもや病変異によりどのような機能異常が起こるのかは不明だった。
今回、京都産業大学、青山学院大学、北海道大学の共同研究で、ミステリンが脂肪代謝の制御因子であることが明らかとなった。ミステリンは、細胞内の脂肪貯蔵部位である“脂肪滴”に局在し、脂肪分解酵素から脂肪滴を保護して脂肪蓄積を促進するはたらきを持つという。
これまでもやもや病と脂肪代謝の関係についてはまったく着目されてこなかったが、今回の発見で、もやもや病が代謝バランスの破綻によって引き起こされる可能性が示唆された。
さらに、もやもや病変異によるミステリンの機能異常について調べたところ、白人のもやもや病患者が持つユビキチンリガーゼ変異でミステリンの脂肪滴からの脱落と異常な凝集形成がみられ、この現象のうちどちらか、あるいは両方がもやもや病の原因である可能性が示された。一方、東アジア人のもやもや病患者が持つR4810K変異では機能異常はみられなかったが、変異の保因者は罹患率が100倍以上となるため、変異が重要なリスク因子であることは間違いない。すなわち、なんらかの追加要因がある場合に、白人変異と同様の異常を引き起こす可能性がある。
今後、2つの異常(ミステリンの脂肪滴からの脱落と凝集形成)がもやもや病発症プロセスにどう関わるのか、さらなる解明が待たれる。