東京工業大学地球生命研究所のショウン・エリン・マックグリン(Shawn E. McGlynn)准教授をはじめとする国際研究グループは、約35億年前の太古代の地球に硫酸塩還元細菌が広く繁栄していたことを突き止めた。
地球の生命はいつどのように誕生し、どのように生きてきたのか。恐竜のように大きく比較的近代に生きた生物なら、化石から姿や生活の様子を知ることができるが、約40億~25億年前に存在したとされるごく最初期の生命は、わずか1個の細胞からなる単細胞生物であったため、化石が得られることは非常に稀である。
今回、同研究グループは、微生物による数段階の硫酸塩還元プロセスのうち、ある特定の反応に関わる酵素(Apr=APS還元酵素)に着目した。太古代の海底堆積物に記録された硫黄安定同位体分別と、現生の硫酸塩還元細菌の代謝に起因する硫黄安定同位体分別を比較した結果、現生の酵素Aprによる同位体分別は、太古の堆積物の同位体分別に酷似していることが明らかになった。したがって、太古代には硫酸塩還元細菌が広く繁栄していた可能性が高いことが推定できた。これは、微生物の細胞の中で行われる化学反応が、堆積物中に同位体比として記録されていることが確認できた初めての例である。
同位体分別を起こす微生物種は多数存在しており、今後、微生物種について生化学と堆積物記録の比較により、微生物同士の生命活動の類似度や堆積物が堆積した当時の古環境を知ることができると期待される。
論文情報:【Nature Communications】Role of APS reductase in biogeochemical sulfur isotope fractionation