東京農工大学大学院農学研究院の永岡謙太郎教授と摂南大学農学部の井上亮教授、ベビー用品のコンビは、緊張時に腹痛を起こす人が1週間前からパラプロバイオティクス(殺菌乳酸菌EC-12)を飲むと、腹痛を予防できることを発見した。
研究グループは緊張すると腹痛が起きる自覚症状を持つ学生27人のうち14人に、先行研究によりマウスの不安様行動を抑制することが明らかになった乳酸菌Enterococcus faecalis EC-12株(EC-12)の加熱殺菌菌体を配合した食品、13人に偽薬配合食品を大学前期試験の1週間前から当日まで摂取してもらい、腹痛が発生するかどうか調べた。
その結果、パラプロバイオティクス配合食品を摂取した学生の93%が腹痛など消化器症状の改善を感じ、偽薬配合食品を摂取したグループに比べて有意に改善率が高かった。糞便を用いた腸内細菌叢の解析をしたところ、腸内細菌叢の構成や多様性に大きな変化は見られなかった。
しかし、糞便を成分分析した結果、パラプロバイオティクス配合食品を摂取した学生は胃腸の運動や粘液分泌を促進する代謝物トリプタミンが有意に増加していることが分かった。トリプタミンは腸内細菌が生成するもので、研究グループはパラプロバイオティクス配合食品の摂取が腹部の不快感を軽減させたとみている。
乳酸菌やビフィズス菌はうつ病や不安を軽減するプロバイオティクスとして知られているが、最近の研究で殺菌されたあとでも健康上の利点を提供することが明らかになっていた。