若いころから記憶力を鍛えていたラットが中高年になっても優れた記憶力を維持していることが、金沢大学人間社会研究域の谷内通教授らの研究で明らかになった。
人間の記憶力には決まった物事を覚える力だけでなく、刻々と変わる情報を記憶・更新して利用する「ワーキングメモリ」がある。これまでラットなどの人間以外の動物も、放射状迷路を使った学習を通じてワーキングメモリを持つことが研究されてきた。
金沢大学によると、研究グループは学習段階として放射状に8本の走路がある迷路を用意し、迷路内のいくつかの場所で餌を食べさせ、その後の記憶力テストで別の場所に行くと餌があるという学習実験を行った。
学習段階の記憶が残っていれば、通らなかった走路を選んでえさにありつけるというわけで、ラットは若いころ(生後約4カ月)に放射状迷路で訓練を受けた生後約20カ月の中高年世代を使用、待機時間を1時間、24時間、48時間、72時間に設定した。
その結果、正答率は待機時間1時間で80%を超し、24時間で約70%、48時間、72時間でそれぞれ50%以上を記録した。24時間後の正答率約70%は、若いラットで実験した場合の60~63%を上回っていた。優れた記憶力を示した要因として、若いときから記憶力(特にワーキングメモリ)を使う課題を継続的に行っていたことが考えられたという。
研究グループは記憶力に衰えが出ると考えられる中高年になっても、若いころに記憶力を鍛えていれば、若いラット以上の記憶力を発揮できるとみている。