東北大学の中村力特任教授らの研究グループはマイクロシステム融合研究開発センターと共同で、胃酸発電で動作する錠剤サイズの「飲む体温計」を開発し、動物適用実験に成功した。
安静時の基礎体温、深部体温やそのリズム(体内時計)は、健康状態を把握するための重要な指標だ。これらは一般的な体温計では測定が難しく誤差も大きい。温度センサを肛門に挿して直腸温を測定する方法は、正確・容易に深部体温を測定できるが日常的な実施は困難だ。
そこで研究グループは胃酸発電でエネルギーを獲得する「飲む体温計」を開発。試作した錠剤型センサの外形寸法は直径約9mm、厚み約7mmのもの。胃酸電池の電極金属板以外は樹脂に覆われ、樹脂内部には温度センサ、マイコン、カスタム集積回路、通信用コイル、積層セラミックコンデンサーなどを実装。センサが飲み込まれ胃酸電池電極部に胃酸が接触すると発電し、センサが胃を通過する前に発電エネルギーで昇圧回路を動かし、高い電圧でコンデンサーに充電する。
この充電エネルギーを用いると、30分に約1回腸内温度を測定し体外の受信器へデータを送る。体外への通信は、体内吸収の極めて少ない約10MHzの周波数帯での近距離磁気誘導方式を採用。センサの対外排出を通常で24時間以内にし、下水処理場の沈殿工程での回収・廃棄を想定している。
今回、試作したセンサを動物に服用させて動作検証をした結果、発電・測温・通信というシステム全体の動作が確認され、コンセプトの実証に成功した。今後は通信距離の延長や低価格化(原価100円以下)などを検討しながら、ヒトへの適用試験を目指すとしている。病気の早期発見や健康増進につながることが期待される。
参考:【東北大学】錠剤サイズの「飲む体温計」動物適用実験に成功~胃酸発電で動作。病気の早期発見や健康増進に期待~(PDF)