海洋研究開発機構と東京大学、東京理科大学のグループは、紙コップの材料となる板紙の透明化に成功した。ストローに成型することも可能で、海洋汚染が問題になっている容器包装プラスチックの代替品として注目を集めそうだ。
海洋研究開発機構によると、研究グループは木の主成分であるセルロースを高温で溶かしたあと、室内に置いて固め、水洗いして乾燥させて透明の板紙を開発した。厚さ0.3~1.5ミリの通常の板紙と同等から5倍の厚みのものが、材料の透明性を表す指標のヘイズ値30%以下という高い透明度を示し、100メートル後ろにある物体を板紙越しに視認できた。
コップやストローなど立体的に成型できるうえ、濡れた状態のままでコップのように水分を保持することが可能。意図せずに海へ流出しても海中の微生物が分解してくれるため、海中に長期間残留することがなく、プラスチックのような海洋汚染を引き起こす心配がない。
製造時に発生する廃液は製造工程で再利用できるうえ、透明な板紙から透明な板紙を製造するマテリアルリサイクルも可能になる。今回の開発には綿花を採取したあとで種子に残るコットンリンターという繊維を使用したが、他のセルロースでも代用できる。
実用化に向けては連続製造工程の確立や使用済み溶剤の回収・再利用の効率化など課題が残る。研究グループは引き続き、これらの課題解決に向けて研究を重ねる。