畿央大学の井川祐樹氏(健康科学研究科博士後期課程)と大住倫弘准教授らは、大阪大学大学院の細見晃一医師らと共同で、検査・解析により神経障害性疼痛と侵害性疼痛を有する脳卒中患者の臨床症状の特性と異常感覚および痛みに関連した脳損傷部位を明らかにした。
脳卒中患者は、脳卒中発症直後や発症数カ月後に感覚障害を伴う神経障害性疼痛の痛みと筋骨格系の痛みである侵害性疼痛を生じることがある。これらの痛みは多くの場合、複数の症状が重なり合って現れるため、適切な治療が困難だ。一方、神経障害性疼痛と侵害性疼痛の違いに注目し、二つの痛みのタイプを対比させ、感覚評価や画像解析を含めた包括的調査を行った研究はほとんどなかった。
そこで研究グループは、神経障害性疼痛である中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)のグループ、侵害性疼痛である非中枢性脳卒中後疼痛(non-CPSP)のグループ、痛みなしグループの3群に分け、痛みの質問紙、簡易的定量的感覚検査、画像解析により脳卒中後疼痛の特徴を詳細かつ包括的に分析した。
その結果、CPSPグループの患者は、冷覚刺激に対して感覚が鈍いにもかかわらず痛みが誘発されやすく、安静時でも強い痛みが持続するという特徴があり、その症状は脳の皮質および皮質下の損傷部位、連絡線維の破綻に依存していることが分かった。一方、non-CPSPグループでは、異常感覚は認めず、関節を動かした際に一時的な痛みがあるのみで、筋骨格系の問題が直接的に関係することが示唆された。
今回の研究成果は、脳卒中後疼痛のサブタイプ別の特徴を指標とした意思決定を促し、適切・正確な治療につながる可能性がある。今後は中枢性脳卒中後疼痛の縦断的な観察をする予定としている。