北海道大学、京都大学、東京大学の研究者らと160人の市民科学研究グループは、日本固有種のヘビ類ヤマカガシに、これまで知られてきた6種類の色彩多型をはるかに上回る、少なくとも123種類もの体の色と模様の組み合わせが存在することを明らかにした。
地球上に生息する生物が織りなす莫大な多様性、とりわけ生物の体の色や模様のちがい(色彩多型)を研究者の力のみで観察、記載し、追究することは極めて困難である。日本固有種のヘビ類ヤマカガシについても、これまでその体の色や模様は大まかに6種類の色彩型(関東型・関西型・九州型・黒化型・白黒型・青色型)にまとめることができると考えられてきたが、観察の対象となった地域は限られており、日本列島全域での色彩多型の分布や、地域の名を冠した色彩型が実は他の地域にもいるのではないかという疑問は未解決のままだった。
そこで今回、研究者と市民とが協力して自然界の謎を解き明かす強力なツール「市民科学」からのアプローチを試みた。Twitter(現X)上で、ヤマカガシの画像データ収集への協力を呼びかけたところ、ヤマカガシの分布域をほぼ網羅する青森県の下北半島から鹿児島県の屋久島に至るまでの日本全国から、延べ160名の市民の参画により、合計953点の画像が集まった。
これらを調査した結果、驚くべきことに、従来の6種の色彩多型を大きく超える、少なくとも123種類もの体の色と模様の組み合わせがあることがわかった。
「関東型」など地域固有の色彩型とされてきた各型が、その名を冠した地域以外で広く分布していることも判明した。また、東北から九州にかけて、背側の体色は深い緑色から明るい緑やクリーム色へと変化する傾向、生息地域の温度が低いほど模様(斑紋)が小さくなる傾向も見出した。
今回の研究により、ヤマカガシの驚くほど豊かな色彩の多様性が日本列島スケールで明らかとなった。研究者と市民のタッグが生物多様性の研究に極めて有用であることを示した成果といえる。