岡山大学は、三宅医院(岡山市南区)、ウィーメックス株式会社と連携し、無痛分娩の現場における課題解決を目指した共同研究を開始した。

 欧米では分娩時の疼痛緩和が一般的であるのに対し、日本では認知度の低さや人的資源の不足などから普及率が依然として低い。無痛分娩の多くは硬膜外麻酔によって行われており、現在では麻酔科医が担当するのが一般的だが、かつては外科医や産科医が行っていた歴史もあり、現在でもそのような施設が存在する。麻酔科医が専門家として無痛分娩に関与することで、安全な医療提供が期待できるが、麻酔科医の不足により無痛分娩を実施できない施設も多い。

 そこで岡山大学病院麻酔科蘇生科は、開業産院である三宅医院グループ三宅医院、ウィーメックス株式会社と協力し、遠隔医療システムを用いた無痛分娩の研究を開始した。硬膜外麻酔の専門家である麻酔科医が処置を行い、その後の疼痛コントロールも遠隔医療システムを用いて管理し、妊婦が安心して安全な無痛分娩が提供できるかを検討する。

 無痛分娩を希望する妊婦が入院した際、岡山大学病院の麻酔科医が三宅医院に出向き、硬膜外麻酔を施行する。その後、麻酔が安定し妊婦の状態が落ち着いた段階で、麻酔科医は岡山大学病院に戻り、ウィーメックス社が提供する遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」を用いて妊婦の診察や疼痛管理を遠隔で実施する。

 分娩の進行や妊婦の状態に応じて、必要があれば再度現地に赴き直接対応する体制を整えることで、麻酔科医が常時ベッドサイドにいなくても、リアルタイムで妊婦の状態を把握し、安全な無痛分娩を提供することが可能となる。出産後、問題なく麻酔科医の介入が必要ないことを確認して遠隔医療を終了する。現時点で、同意を得た妊婦に対して遠隔医療を提供しており、研究は順調に進行している。

 分娩中の疼痛緩和は妊婦の希望に応じて提供されるべきだが、現状では人的資源の制約から十分な体制が整っていない。本研究が進展し、遠隔医療によるサポート体制が確立されれば、無痛分娩の安全な普及が期待でき、妊婦が住み慣れた地域で安心して出産できる環境の整備につながると考えられる。

参考:【岡山大学】岡山大学・三宅医院・ウィーメックスの3者で無痛分娩の現場における課題解決に向けた共同研究を開始!(PDF)

岡山大学

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