森林総合研究所、東京大学、北海道大学、かながわ野生動物サポートネットワーク、山階鳥類研究所の研究グループは、海鳥オオミズナギドリが繁殖する伊豆諸島御蔵島での調査により、従来の調査によるオオミズナギドリの帰島記録より5週間早く、ネコが同種の捕食を開始していることを明らかにした。
オオミズナギドリは東アジア地域に繁殖し、最大繁殖地が伊豆諸島御蔵島(東京都)だ。準絶滅危惧種に指定されている。近年、御蔵島では急激に減少し、野生化ネコによる捕食が要因とされた。
今回、捕食開始の正確な時期を知るため、オオミズナギドリの越冬期から繁殖期に移行する1月~3月初旬(2024年)に、御蔵島森林域で捕獲された野生化ネコが排出した糞の内容物を分析した。
従来の調査でのオオミズナギドリの最も早い帰島記録は3月10日。今回の調査の結果、早くも1月29日に捕獲されたネコの糞から確認された。記録より5週間も早い時期に捕食し始めていることが判明した。
これにより、御蔵島でのネコ1頭当たりの年間捕食数の推定値は従来の研究による313羽から330羽に更新。さらに、ネコに捕食される総数は年間3万4980羽以上と推定した。
また、オオミズナギドリ以外にも、国内希少野生動植物種で国の天然記念物のアカコッコ、準絶滅危惧種で国の天然記念物のカラスバト、オオコノハズクの3種の陸鳥への捕食も確認。陸鳥全体で年間2120羽以上がネコに捕食されていると推定した。
現在、御蔵島の野生化ネコ対策は、御蔵島村や有志グループによる小規模なものだけ。一刻も早く国や都など関係機関が一丸となって対策を実施する必要があるとしている。