慶應義塾大学環境情報学部の武藤佳恭教授とMiZ株式会社は共同研究を行い、JIS規格「4%以上で爆発する」とされている水素が、実際には実測10%未満であれば爆発しないことを突き止めた。また、市販のH2ガス吸入機に対しただちに安全規制が必要であることも警告している。

 最近、水素は予防的および治療的抗酸化剤として多く利用されている。国内では2005年に初めて東京大学とMiZ株式会社の研究グループが、電気分解によって生成された中性の高濃度水素水を飲用すると、酸化剤によって誘発されたラットの酸化ストレスが効果的に減少したことを報告した。そのことから水素は、酸化ストレス誘発性の様々な疾患や障害の治療に有効であることが提案され、様々な水素ガス吸入機が病院や家庭で使われている。

 研究グループは、H2ガスと空気との混合濃度を調べるために5段階のH2濃度(4%、10%、15%、20%、100%)の環境下で燃焼性と爆発性を調べた。その結果、H2濃度は10%未満でなくてはならないことが分かった。次に市場に出ているH2ガス吸入機(15製品)のH2濃度を測定したところ、13製品に爆発の危険性があることが判明した。うち3製品はライターの炎または静電気を近づけると大きな爆発が認められた。以上の結果から、ユーザーを保護するため、危険な爆発を避けるためのH2ガス吸入機の消費者に対する安全規制が直ちに必要であると警告する。なお、1製品はH2ガスの発生をまったく確認できなかった。

 MiZは実験結果をもとに、H2濃度を10%未満に抑えた水素ガス吸入のための装置(MHG-2000α)を開発した。H2ガス濃度が10%以上になった場合、安全のために水の電気分解がすぐに中止される「世界唯一の爆発しない水素ガス吸入機」で、一般家庭でも安全に使用できるとしている。

論文情報:【Medical Gas Research】Preventing explosions of hydrogen gas inhalers

慶應義塾大学

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