東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の林直亨教授、毛塚和宏講師が日本の伝統芸能に従事した1700年以降に生まれた男性566人の寿命を分析したところ、伝統芸能従事者の寿命は長い傾向があったものの、歌舞伎役者だけは例外的に短いことが分かった。

 東京工業大学によると、林教授らは18世紀以降に歌舞伎、茶道、落語、長唄、能に従事した男性566人の誕生年、没年について、ウェブや書籍などの情報源から集計し、自殺や戦死、事故死を除いて寿命を解析した。さらに同じ時代を生きた天皇家、徳川将軍家の男性133人のデータも解析し、比較した。

 その結果、すべての伝統芸能で天皇家や将軍家より寿命の中央値が15歳程度長かったが、1901年以降に生まれた人に限定すると、伝統芸能従事者のうち、歌舞伎役者が他の伝統芸能より寿命が短いことが明らかになった。

 歌舞伎役者や能楽師は長期間の公演とそのけいこで高強度の運動が行われている。林教授らはそれが長寿につながっているのではないかという仮説を立て、解析に当たったが、その仮説は外れる結果となった。

 林教授らは歌舞伎以外の伝統芸能で実施されている楽器演奏や発声、発話といった活動が長寿に好ましい結果を与えていた可能性があるとみており、今後の研究では伝統芸能での運動以外の活動が健康や寿命に当たる影響を考慮する必要があるとしている。

論文情報:【Palgrave Communications】The influence of occupation on the longevity of Japanese traditional artists

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