昭和女子大学では、創立100周年の歴史で初となる学部生によるベンチャー企業「株式会社Tapirus」が誕生した。2019年、大手企業の開放特許を活用した事業アイデアを競う「知財活用スチューデントアワード」で最優秀賞に輝いた企画をもとに事業化する。

 株式会社Tapirusは、グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科前田純弘ゼミの4年生9人と担当教員が1万円ずつ出資して設立。社長はゼミ長の鈴木亜未さんが務め、乳幼児の育児をしている人をサポートする機器「Tapirus」の開発、販売を目指す。

 「Tapirus」は、富士通の開放特許「非接触バイタルセンサー」(今後、特許ライセンスを取得予定)を活用したセンサー。壁や天井に設置することで、乳幼児の睡眠時の体の向き、心拍数、呼吸状態などを計測し、親がスマートフォンで確認できる。異変があればアプリで警告するので、親が家事や仕事に集中し、安眠しやすくなる。

 従来、乳幼児突然死症候群(SIDS)関連で乳幼児の様子をチェックする製品は接触型のため、乳幼児が外したり嫌がったり、感知データが限られる等の課題があった。また、親や保育園にヒアリングすると、乳幼児の睡眠を見守るのに大きな負担がかかっていることがわかった。そこで、学生らは乳幼児の見守りシステムを提案することに。提案した企画は、2019年の西武信用金庫主催の「知財活用スチューデントアワード」で最優秀を受賞。その際、審査員たちから事業化を勧められ、今回の会社設立となった。

 「株式会社Tapirus」は、現段階では調査会社的位置づけで、当面は技術力のある中小企業に試作品の製作を依頼するために製品の仕様などの詳細を詰める作業を行う。試作品製作のための資金は、クラウドファンディングなどでの調達を検討。創業メンバーは来春に卒業・就職するが、その後も副業として事業を継続する方法を模索している。
 
 社長を務める鈴木さんは「会社設立は講義で学んだこととリンクしていて、西武信金様や関係機関の皆様のサポートで実現でき、今でも夢みたいです」と喜びを語った。また、監査役として新会社を支える前田教授は「学生のアイデアを本気で事業化しようと支えてくれるアワードに、これからも学生たちに挑戦してもらいたい」と、アイデアの事業化に挑戦する学生たちが増えることに期待を寄せた。

参考:【昭和女子大学】昭和女子大学初の学生ベンチャー企業設立 乳幼児の育児サポートシステム会社「Tapirus」創業

大学ジャーナルオンライン編集部

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