身近にあって何でも相談に乗ってくれる総合的医療のプライマリ・ケアが充実している高齢者ほどインフルエンザなどの予防接種を受ける率が高いことが、横浜市立大学大学院データサイエンス研究科の金子惇講師らの研究で分かった。金子講師らはプライマリ・ケアの充実が予防接種率向上に役立つとみている。

 横浜市立大学によると、金子講師は前任の浜松医科大学特任助教時代の2018年2~3月に全国25カ所の総合内科、家庭医療科、総合診療科を受診した患者を対象にプライマリ・ケアに関するアンケート調査を実施、65歳以上の高齢者1,000人の回答を抽出、分析した。使用したプライマリ・ケアの尺度は国内で一般的なJPCAT。

 対象者の予防接種率はインフルエンザ68%、肺炎球菌53.8%だったが、プライマリ・ケアが1段階充実すると、予防接種を受けている人の割合がインフルエンザで1.19倍、肺炎球菌で1.26倍増え、予防接種の実施とプライマリ・ケアの充実に正の相関関係があることが分かった。

 厚生労働省がインフルエンザ、肺炎球菌の予防接種対象者と定めた高齢者の接種率はインフルエンザ50.2%、肺炎球菌37.8%にとどまり、まだ十分といえない。これまでの研究では、小児の予防接種やがん検診とプライマリ・ケアの充実に正の相関関係があることが明らかにされているが、高齢者の予防接種との関係は調べられていなかった。

論文情報:【Journal of General and Internal Medicine】Better Patient Experience is Associated with Better Vaccine Uptake in Older Adults:Multicentered Cross-sectional Study

大学ジャーナルオンライン編集部

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