東北大学大学院医学系研究科器官解剖学分野の小林周平助教と大和田祐二教授らの研究グループは、慶應義塾大学との共同研究により、アレルギー性皮膚炎の発症制御に「脂肪酸結合タンパク質3型」が重要な役割を果たしていることを明らかにした。
近年、食物からの栄養摂取により免疫細胞の機能が変化し、アレルギー病態に影響を与える可能性が示唆されている。一方、脂肪酸結合タンパク質3型(FABP3)は、水に不溶な長鎖脂肪酸を細胞内で輸送するためのタンパク質で、体内の種々の細胞に広く発現しているが、免疫細胞における分子機能やアレルギー病態との関与は不明だった。
研究グループは初めに、免疫組織である脾臓の免疫細胞でFABP3の遺伝子の発現を調べると、リンパ球(Tリンパ球)の一部の集団でFABP3が発現していた。そこで、FABP3を生成する遺伝子を欠損させたマウスを用いて検証すると、アレルギー性皮膚炎を誘導した耳は顕著に腫れ、皮膚炎症の増悪に関与する炎症因子(IL-17)を産生するTリンパ球(Vγ4+γδTリンパ球)も集積していた。
さらに、幼体期のFABP3欠損マウスでは、胸腺や皮膚にVγ4+γδTリンパ球の割合が有意に増加していた。また、試験管内の解析では、FABP3欠損マウスの胸腺由来の一部の細胞(DN2細胞)はVγ4+γδTリンパ球への分化が顕著に亢進していた。
これらの結果は、FABP3欠損による胎児期・新生児期の脂質恒常性の破綻が、成人期のアレルギー性疾患発症に影響を与える皮膚のVγ4+γδTリンパ球の分化を促進することを示している。今回の研究成果は、将来的にアレルギー疾患への新たな予防・治療戦略を提供できる可能性があるとしている。