北海道大学大学院医学研究院の佐々木秀直名誉教授、矢部一朗准教授、長崎大学感染症共同研究拠点の好井健太朗教授らの研究グループが、北海道内の神経疾患患者と健常者を対象にダニ媒介性脳炎ウイルスの感染状況を調べたところ、3人から直近の感染、5人から過去の感染が見つかった。大規模なダニ媒介性脳炎の感染調査は国内で初めて。
北海道大学によると、研究グループは2010~2018年に集められた道内の神経疾患患者と250人の健常者の血液を調べ、過去にダニ媒介性脳炎ウイルスに感染したことを示す抗体があるかどうかを調べた。
その結果、髄膜炎や脳炎など炎症性疾患の患者のうち、3人から直近の感染を示す抗体が発見され、ダニ媒介性脳炎だったことが分かった。さらに、神経疾患患者4人と健常者1人から過去にウイルス感染があったことを示す抗体が検出された。
ダニ媒介性脳炎はマダニが媒介する感染症で、ユーラシア大陸全体で年間1万人の患者が発生している。重篤な脳炎による神経疾患を引き起こし、致死率が高い。北海道では5人の患者が確認され、うち2人が死亡しているが、日本ではダニ媒介性脳炎ウイルス感染状況がよく分かっておらず、見過ごされていた患者がいると疑われている。
今回の調査でダニ媒介性脳炎ウイルスに感染して脳炎や髄膜炎を発症した人が確認されたことから、研究グループは感染調査など研究をさらに進めることにより、ダニ媒介性脳炎の流行を抑える方策の立案につながるとみている。