複数の植物種で共通して、根の先端の輪郭が、橋などの建築物に見られる「カテナリー曲線」に一致することがわかった。
動物や植物の器官の大きさや形は、生物種ごとに多様である一方で、骨や根といった器官の輪郭の形は種を超えて共通しているようにも見える。今回、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、神戸大学の研究者からなるグループは、根の先端の輪郭を定量的に解析する手法を考案し、この見かけの共通性を数学的に検証した結果、驚くべきことに、ネギ、キュウリ、スミレ、ナデシコ、コスモスなど多様な植物分類群に跨る10種の根の輪郭が、いずれもカテナリー曲線と一致することを見出した。
カテナリー曲線は、吊り橋やアーチ橋、スペインのサグラダファミリアなど、世界中の多くの建築物に採用され、力学的に安定な構造を生み出す曲線である。今回の発見により、植物の根の先端も、種や根の作られ方の違いを超えて相似なカテナリー曲線を作り、力学的に安定な形であることが示された。
さらに、カテナリー曲線を作るシロイヌナズナの側根が発生する過程を観察するとともに、細胞分裂の性質を導入した計算機シミュレーションを実施した結果、(1)根の中心の細胞が一様かつ一方向に分裂して伸長すること、そして(2)根の両端の細胞が分裂しないこと、という2つの性質が、カテナリー曲線を形づくる条件であることがわかった。シミュレーション予測と、遺伝子の変異をもつシロイヌナズナの両方において、これら2つの性質のいずれかでも乱れると根端の輪郭がカテナリー曲線から逸脱することが確認されたという。
本研究により、器官の形に種を超えた共通性と、それをもたらす生物学的な原理が明らかとなった。今後は、動植物の器官の形に潜むさらなる共通性の解明が期待されるほか、土の中で根を効果的に成長させる技術への応用にもつながる可能性がある。
論文情報:【Development】Tissue growth constrains root organ outlines into an isometrically scalable shape