静岡県立沼津東高等学校の高校生(研究当時)5名と渡邉伸一教諭(現・静岡県立伊東商業高等学校)、静岡大学グリーン科学技術研究所の道羅英夫准教授らのグループは、駿河湾の水深約300mから採集された深海魚の腸内細菌叢を解析した。
腸内フローラとも呼ばれる腸内細菌叢とは、腸内に生息している多種多様な細菌群のことをいう。腸内細菌は一定のバランスで存在しており、このバランスを整えることは健康維持・生活習慣病の予防につながると考えられている。そのため、魚類でも安全・安心な養殖技術の開発を目的として、養殖魚の腸内細菌叢に関する研究が行われているというが、これまで深海魚の腸内細菌叢については世界的にもほとんど解析されてこなかった。
この点に着目した高校生らの発案で、本共同研究では、日本一の深さを誇る駿河湾から採集された深海魚アオメエソ、ユメカサゴ、ニギスの腸の内容物からDNAを抽出し、深海魚の腸内細菌叢を次世代シーケンサーで初めて解析した。その結果、アオメエソとユメカサゴの腸内細菌叢は、これまでに報告されている魚類の腸内細菌叢と類似していたが、ニギスの腸内細菌叢では、腸内細菌の種類が大きく異なることがわかった。また、3種の深海魚全てにおいて、多数存在する4属が腸内細菌叢の95%を占めており、腸内細菌の多様性は低い傾向にあることもわかった。さらに解析を進めることで、深海魚の生態と腸内細菌叢の関連性の理解につながる可能性がある。
本研究成果は、当時高校生だった岩附利英さんが筆頭著者として主に論文を執筆し、アメリカ微生物学会が出版する国際学術誌「Microbiology Resource Announcements」に発表された。今後、深海魚の腸内細菌叢の特性理解や新奇の海洋微生物資源・遺伝資源の探索に向けて、大きく貢献することが期待される。