関西医療大学博士後期課程の久納健太さんの論文が英文誌Cureus Journal of Medical Scienceに掲載された。
久納健太さんは、関西医療大学の博士後期課程2年生で、鈴木俊明教授の指導のもと振動刺激が刺激側と対側の脊髄運動神経機能の興奮性へ与える影響について研究している。この論文は、今までの健常者での検討ではなく、脳卒中患者への振動刺激の効果に関する研究となっている。
これまで、痙縮軽減に寄与する振動刺激として、片側の振動刺激が反対側同名筋の筋緊張に及ぼす有効性を進めてきた。しかしながら、これまでの検討は、健常者を対象とした研究に留まっており、実際に脳卒中後に痙縮を認める患者にも有効であるかは検討出来ていなかった。そこで、本研究では、脳卒中後に痙縮を認める患者を対象に非麻痺側への振動刺激が麻痺側の痙縮を軽減するか否かをH波を用いて検討した。
本研究では、非麻痺側の橈側手根屈筋に周波数80Hz,振幅0.4mm,荷重量400gの振動刺激を加え、振動刺激前と振動刺激中の2時点において、麻痺側の橈側手根屈筋に対しH波と筋硬度を測定することで、振動刺激の有効性を検討。H波の波形分析項目には、振幅H/M比、H波平均振幅とした。その結果、振幅H/M比、H波平均振幅は振動刺激前と比較して振動刺激中において低下した。一方で、筋硬度においては、有意差を認めなかった。
本研究成果は、痙縮の本質的な機序である速度依存性の伸張反射の亢進に対して、非麻痺側への振動刺激が抑制性の効果をもたらすと解釈される一方で、痙縮によって二次的に生じる筋や皮膚の短縮などの末梢の組織変性に対する効果は乏しいことを示唆している。したがって、リハビリテーション場面においては、非麻痺側へ振動刺激を与えることで麻痺側の痙縮を抑制しつつ、末梢の組織変性に対しては、他の運動療法を併用することが求められる。