北海道で、マダニが媒介する新たなウイルス感染症が発見された。北海道大学、市立札幌病院、北海道立衛生研究所、国立感染症研究所、長崎大学、酪農学園大学、北海道医療大学らの共同の成果。この新たなウイルスは「エゾウイルス」と命名され、2014年以降に少なくとも7名の感染者が北海道内で発生していることがわかった。
研究チームは、2019年及び2020年に、マダニに刺された後、数日~2週間程度のうちに発熱・血小板減少といった症状で札幌市内の病院を受診した2名の患者の検体から、過去に報告されていない未知のナイロウイルスを発見した。
「エゾウイルス」と名付けられたこのウイルス遺伝子に対して、北海道立衛生研究所が保有する、ダニ媒介性感染症が疑われた残余検体を調査したところ、5つの陽性検体が見つかり、最も古い陽性検体は2014年のものだったという。すなわち、先の2症例を合わせて、2014年から2020年までの間に少なくとも合計7名の感染者が発生していたことになる。これらの感染者は、いずれも北海道内での感染が疑われており、エゾウイルス感染症(エゾウイルス熱)は、日本国内では初めて確認されたナイロウイルスによる感染症となる。
ナイロウイルスのほとんどはマダニによって媒介されるウイルスであり、エゾウイルスも同様にマダニの吸血によって体内に侵入すると考えられる。実際に、道内で採集されたマダニの数種からエゾウイルスが検出され、さらに北海道内のエゾシカなどの野生動物にもエゾウイルスの感染が確認された。エゾウイルスが既に北海道に定着していることが示唆される。
これまでのところエゾウイルス熱による死者は確認されていないが、今後、エゾウイルスの北海道以外の地域の分布状況や患者発生動向も明らかにし、より多くの患者を追跡調査する必要があるとしている。
論文情報:【Nature Communications】A novel nairovirus associated with acute febrile illness in Hokkaido, Japan