麻布大学獣医学部獣医学科の河合一洋教授は、Meiji Seika ファルマ株式会社と寄附講座「AMR Surveillance Laboratory (AMRSL)」を開設。薬剤耐性(AMR)に関する研究を行うことで成果を社会に還元する。

 近年、世界的に薬剤耐性への関心が高まっており、世界保健機関(WHO)の「AMRに関する世界行動計画」でも抗菌薬使用の最適化が目標の一つとされている。また、日本の「薬剤耐性に関する国内行動計画」では、畜産・水産・獣医学分野における抗菌薬の適正使用、責任ある慎重使用を主な目標・戦略としている。特に畜産農場での抗菌薬の慎重使用は、獣医学やヒトの医療分野における薬剤耐性の世界的な広がりへの対策として強く求められている。しかし、その現状の把握と対策は道半ばであり、さらに調査を進める必要がある。

 そこで本寄附講座では、全国の家畜疾病または飼養環境由来の検体を収集し、分離菌株の薬剤感受性傾向や薬剤耐性遺伝子の保有状況などを調査して基礎データを蓄積し、アンチバイオグラムを作成することでAMR抑止の方策を模索する。また、Meiji Seika ファルマより、マイコプラズマ培養・薬剤感受性試験技術、および大量検体処理技術の技術提供と、国内遍くアクセスできる顧客とのネットワークの提供などの協力を得て研究を展開する。

 具体的には、まず初めに牛の肺炎、乳房炎、豚の腸炎由来の菌株を中心に収集し、収集した菌株に対する抗菌薬の最小発育阻止濃度(MIC)を測定しながら、薬剤感受性ディスクの阻止円との関係を調査する。さらに、国の関係機関とも連携し現場で利用できる抗菌薬選択のためのディスク法の判定基準の策定を行っていくことを考えている。

 河合教授の研究チームは、これまでも農林水産省の委託事業を受け、牛乳房炎のディスク法の判定基準を策定した実績があり、引き続きこの問題に対し意欲的に取り組んでいく方針。同時に以下のような、SDGsを意識した活動も続けていく。

<SDGsへの取り組み>
SDGs12「つくる責任 つかう責任」:安全・安心な乳製品生産の実現のために、抗菌薬残留防止に繋ぐ抗菌薬に代わる医薬品の開発を模索。
SDGs2「飢餓をゼロに」,15「陸の豊ゆたかさも守ろう」:持続可能な農業を目指し、家畜の健康・環境保全のために抗菌薬使用の低減や動物福祉について考える。
SDGs3「すべての人に健康と福祉を」:薬剤耐性問題の解決に向けて、One Healthアプローチ実現のために貢献する。
SDGs4「質の高い教育をみんなに」:質の高い獣医学教育実現のために、学生のアドバンスト教育を行う。
SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」:産官学の取り組みを推進し、学術情報の発信と成果の出口をより実用的なものにする。

参考:【麻布大学】麻布大学、寄附講座:AMR Surveillance Laboratoryを開設

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