畿央大学大学院博士後期課程の水田直道氏と森岡周教授らは、脳卒中患者の歩行時における筋シナジーの異常パターンから3つのサブタイプを特定し、各サブタイプの歩行特性について検証した結果を発表した。
脳卒中患者は歩行能力が低下することが多く、これには、下肢筋活動パターンの異常が影響すると考えられている。脳卒中患者の歩行時の異常な筋活動パターンは、立脚相または遊脚相において確認されるが、個々の症例によって異なるという。今回、本研究者らは、研究対象となる脳卒中患者に歩行テストを実施してもらい、筋活動の異常パターンを筋シナジーの側面から分類することで、3つのサブタイプを特定した。
各サブタイプで、異なる歩行特性が明らかになったとしている。立脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢伸展角度が減少していた。遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、快適歩行時に麻痺側下肢屈曲角度が減少していた。最後に、遊脚期における筋シナジーの異常パターンがみられるサブタイプでは、麻痺側下肢を大きく振り出すように歩くと、筋シナジーの異常パターンが即時的に改善することが分かった。
それぞれのサブタイプに応じて快適歩行時の運動学的パラメータが異なっていたことから、今後は、サブタイプの神経基盤や、筋シナジーの異常パターンがどのような回復過程を辿るかについて、明らかにしていく必要があるとしている。