群馬大学の尾崎純一教授と日清紡ホールディングス株式会社の共同研究をもとに開発された白金代替触媒「カーボンアロイ触媒」が、非白金触媒として世界で初めて固体高分子形燃料電池の電極に実用化された。
固体高分子形燃料電池は、発電時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーソースとして知られ、家庭用から自動車分野、産業機械・建設機械などの分野でも実用化が進んでいる。一方で、従来の固体高分子形燃料電池の電極触媒には高価で有限な資源である白金が使用されており、この燃料電池が今後さらに普及拡大していくためには、白金に代わる触媒の開発が不可欠とされてきた。
群馬大学の尾崎教授は、1990年代に電極触媒活性を持つカーボン材料を発見して以来研究を重ね、2006年からは日清紡と共同でカーボン材料での触媒の研究開発を進めてきた。その共同研究をもとに工業化に至った「カーボンアロイ触媒」は、希少資源である白金を一切使用せず、工業生産で安定供給が可能なカーボンを主原料としながら、ポータブル型燃料電池の使用環境において白金触媒と同等の発電性能を実現したという。
日清紡グループは今後、より大きな市場にむけて「カーボンアロイ触媒」の用途開発を進め、固体高分子形燃料電池の普及拡大で水素社会の実現に貢献していくという。また、群馬大学も、「水素をつくる・ためる・つかう」ためのカーボン材料の方向性について、その適用範囲を拡大していきたいとしている。
「カーボンアロイ触媒」を採用した燃料電池スタックは、2017年12月にBallard Power Systems Inc.から販売を開始する予定。